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最高裁判所第二小法廷 昭和52年(オ)5号 判決

上告人 村井茂(仮名)

被上告人 松岡房子(仮名)

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人菅熊夫の上告理由について

共同相続人が全員の合意によつて遺産分割前に遺産を構成する特定不動産を第三者に売却したときは、その不動産は遺産分割の対象から逸出し、各相続人は第三者に対し持分に応じた代金債権を取得し、これを個々に請求することができるものと解すべきところ、原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人、被上告人らの被相続人訴外阿部豊の遺産に属する本件土地につき、上告人は、共同相続人全員の合意に基づき、自己の持分については本人として、その他の共同相続人の持分については委任による代理人として、これを訴外財団法人岡山県開発公社に売却し、遺産分割前に同訴外公社から売却代金を受領したというのであるから、被上告人は右売却により持分に応じた代金債権を取得し、委任に基づき同代金を受領した上告人に対し民法六四六条一項前段に従いその引渡を請求しうるものとした原審の見解は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大塚喜一郎 裁判官 吉田豊 本林譲 栗本一夫)

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